誹謗中傷は「表現の自由」に含まれてない!刑事罰に問われる可能性も
日本国民には国内における「表現の自由」が権利として保証されています。これはネットやSNSでの投稿においても同様ですが、では特定の個人や団体に対する「誹謗中傷」についても表現の自由と判断されるのでしょうか?
今回は、表現の自由とはどのような権利のことなのか基本的な内容をご説明した上で、ネットでの誹謗中傷がその権利によって守られるのかをご紹介します。誰もが被害者、加害者になる可能性があるだけに知っておいてほしい情報です。
1.表現の自由ってそもそも何の権利?
「表現の自由」という権利があることはおよそ誰しも知っていることだと思います。では、正確にどのような権利なのか聞かれたとき答えることはできますか?まずは、表現の自由とはそもそもどのような権利なのかからご説明しましょう。
表現の自由とは基本権利に含まれるもの
表現の自由とは日本国憲法によって定められた日本国民の権利のひとつです。
日本国憲法第21条1項には「集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する」と規定されており、過去の判例においても自由な意見や情報が自己の思想及び人格形成に欠かせないものとしています。
つまり、どのような発信手段、発信内容であれ日本国憲法ではその権利を認めているのです。
社会的に問題のある発言も保証されている
日本国憲法における表現の自由はおよそすべての発信内容に適応されているため、たとえそれが反社会的な思想に基づいたものであっても制限することはありません。まさに「国民の権利を第一」とする民主主義国家ならではの考えです。
これによりネット上では誰もが自由に投稿でき、ニュースでは政権をあまり気にすることなく有識者が発言できます。また、相手の発言に対して反論する権利もあるため、最近では有識者の発言からSNSが炎上することも珍しくありません。
2.誹謗中傷は表現の自由に含まれない!
日本は民主主義国家であり、日本国憲法によって日本国民には表現の自由が認められているとのことでした。そこで気になるのが「誹謗中傷」もまた権利として認められているのか?では、誹謗中傷に対する考え方を見ていきましょう。
ネット上の誹謗中傷は表現の自由ではない
ネット上などでよく見かける誹謗中傷ですが、これに関しては表現の自由は認められていません。
と言うのも、日本国憲法により表現の自由が認められると同時に、「名誉権」が保証されているためです。名誉権とは「その個人(団体)の品性、信用、名声などを保証する権利」のことで、表現の自由と同様に重要視されています。
その為、ネット上で個人(団体)の品性、信用、名声などを著しく損なうような誹謗中傷は認められないのです。
ネット上の誹謗中傷によって考えられる刑事罰
ネット上の誹謗中傷には表現の自由が適応されないだけでなく、場合によっては「刑事罰」が適応されます。
例えば、名誉毀損罪やプライバシーの侵害、侮辱罪や信用毀損罪及び業務妨害罪などがこれにあたり、もし適応されると以下のような刑事罰に問われる可能性があるためネット上の誹謗中傷は決して気軽な行為ではありません。
- 名誉毀損罪…3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金
- プライバシーの侵害…刑法上の犯罪ではないが、損害賠償責任に問われる
- 侮辱罪…公然と人を侮辱した者は、拘留又は科料に処する
- 信用毀損罪及び業務妨害罪…3年以下の懲役又は50万円以下の罰金
ここでポイントとなるのが刑事罰に問われるかどうかに「真実の有無(真偽)」は関係がないことです。つまり、たとえ投稿内容が真実のみであったとしても誹謗中傷していれば刑事罰に問われる可能性があります。
3.まとめ
ネット上の投稿には「表現の自由がある!」と言われますが、あくまで他人の権利を侵害しない範疇のことです。
誹謗中傷のように誰かの名誉権を侵害するような発言の場合、表現の自由としては認められません。名誉毀損やプライバシーの侵害、侮辱罪などの刑事罰に問われる他、民事訴訟で損害賠償を請求される可能性さえあります。
ネット上で誹謗中傷を受けたときは警察や弁護士に相談し、法的な対応も検討しながら自身の権利を守りましょう。
ちなみに、警察に相談するときは地域の所轄ではなく、各県に配置されているサイバー犯罪相談窓口に相談するのがおすすめです。都道府県警察本部のサイバー犯罪相談窓口は、こちらから検索できるのでぜひ参考にしてみてください。